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木目1

閑吟集は唄う
小唄や民謡の源

  谷戸貞彦 著


  A5版 200ページ
    2300円(税別)
富士庵桑門編集の閑吟集の解説書。



〔内容紹介〕

 閑吟集は室町時代に編まれたもので、小唄とそれに類似のものが集められている。小唄の標準形は、七・五音の語句が二句並んだものだ。鎌倉時代には今様がはやり、『梁塵秘抄』にまとめられたが、今様の基本型は七・五調の四句で成りたつから、小唄はそれが半分になった形だと言える。そして、題材は恋愛に限られる。
 今様を好んだのは、貴族と僧侶と新興武士が中心だった。それに対し、小唄を口ずさむ範囲ぱ農民や漁民・町人・遊女の世界まで広がっている。これが、小唄に人々の生の息吹きが感じられる理由だろう。
 この本の編者は都にも行ったことがあるようだが、最後は富土の近くに引退したと、記している。彼の本に筆者名を贈るならぼ、富士庵桑門の名がふさわしいと思う。
 彼は序文に述べるように、神楽歌や催馬楽、今様を参考にし、田楽や早歌・近江節・大和節たどの文句を取り入れて、小唄集を作ろうと試みた。彼は漢文の素養があり、中には漢詩風の歌も混ぜている。これら富士庵桑門のまとめた唄の数々は、彼の手により添削され、見事に洗練されたもので、彼は天才的な文芸の能力を持つ人だったと言えるだろう。
 日本の古典文学では、本音を別の言葉に変えるだけでなく、全体の文章までも、他のことに見せかけた。これを、見せかけ表現と言う。この閑吟集もまた例外ではない。
 それで、見せかけに惑わされたいように、真の意味が分かるよう、この本では〔註〕の中で隠し言葉を説明する。また、唄の文語文では、本音が分かるような漢字を使って、真意を知らせる工夫をした。


〔目次〕

一.閑吟集序文
二.唄と訳註(全三百十一首)
三.歌の配列と種類
四.閑吟集序文の文語
五.家族制度の変遷


木目1